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 切り抜き ⑤



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画家のアンドリュー ・ ワイエスが亡くなって、某新聞社の編集委員が惜別を書いた。


  台所と物置の行き来にクリスチーナはいつも右の青いドアを使ったし、

  弟のアルバロは、左のドアを使った。青いドアの横には、いつも彼女が着ていた

  ピンクの服の切れ端が下がっている。ドアは二人の肖像画であり、

  鎮魂の作なのである。ワイエスの絵の奥深さはこんなところにある。


新聞社という衰退するオールドメディアの奥深さはこんな文章を書ける人の存在にある。

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結婚を控えた女性。腹部痛を訴え診察するとステージ4で手術不可。

入退院を繰り返し最後の退院の時は4人部屋であとはみんなお婆さん。


  「 夜も賑やかで、寝にくい? 」「 でもね、かわいいからいいわ 」

そして、平静な、でもしぼり出すようなつぶやき。

  「 わたしも、おばあちゃんになりたかったなぁ 」

 ( 田村恵子 京都大学大学院教授 長年の看護士経験より )

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大酒飲みの父親が亡くなる。男たちが粗末な棺を墓地へと運んでいると

村の子供たちがやってきて「 大酒飲みが死んだぞ 」とはやし立て石を投げた。

まだ幼い大酒飲みの息子が棺に当たった小石を拾い投げ返そうとした時、

男の一人が制止して言う。「 ここが我慢のしどころだ 」 息子は石を大事に持ち帰り、

苦難に出会う度「 ここが我慢のしどころだ 」と忍んで後に立派な人物になったという。

                  ( 俳人 黛まどか )

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” 仕事が抱き締めてくれたことがあるのか ” は小説の一文の引用だった。

結論から言うと、仕事は別に抱き締めてはくれない。ただ、生きることから

ずり落ちそうになったら抱き止めてくれるものではある。仕事よりも抱き締めて

くれそうな家族も恋人も友人も、実は仕事を一つ一つ進めるよりは不確実なものだ。

仕事はわかりやすいし、こなせば報酬があり、自分の未来を少し助ける。

抱擁を期待したら裏切る可能性が高いが、やらないよりはやったほうがいいことだと思う。

                  ( 作家 津村記久子 )

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野球に全く興味がないのに高価なグローブを祖父から贈られた小学生の筆者。


  欲しいものとあげたいものが微妙にズレる。今から思えばそのズレこそが

  大切だったような気がする。欲しいものをドンピシャでもらった時の記憶は
 
  ただただ幸福の一色のみで塗られているが、ズレた贈り物は螺旋のように

  思い出すタイミングによって異なった光を放つ。( 歌舞伎役者 木ノ下裕一 )

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「 出世の極意 」 出世する人は、その佇まいが公園に似ている。公園は人が集まり

遊ばれてこそ公園で、自分が遊ぶわけではない。だからひとりでいると、どこか寂しさが

漂っており、つい手を貸してあげたくなるのである。( 作家 高橋秀美 )

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尾崎世界観さんは少年時代、ワタベに200円盗まれて弟と共に追いかける。


  走りながら、どこかで少しワクワクしていた。盗まれた200円と引き換えに

  圧倒的な被害者の立場を手に入れて、公然と怒ったり同情されたり

  優しくされたりする事にワクワクしていたんだと思う。そこには、盗むよりも

  もっと卑しい気持ちがあったはずだ。

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「 なぜ自殺はいけないのですか? 」の問いに評論家 ・ 岡田斗司夫さんが答えて、


  あなたは自殺したいと思うような日々を生き抜きました。私よりも、ずっと突き詰めた

  言葉が出せるはず。あなたにはその問いに答える権利がある。きっとあなたの言葉なら

  私より多くの命を救える。これから生涯考え、答えてあげてください。

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「 秋だね、ママ! 」これだよ、スナックのあいさつは。「 いらっしゃいませ 」で

迎えられるんじゃないんだよ。ママの虫の居どころが悪い時だってある。変な客と

同席する時もあるんだ。どう臨機応変にコミュニケーションをとるか。かび臭いトイレ、

ママが水道水で洗ったおしぼり、それもまたいいんだ。スナックは素晴らしい日本の文化。

残しとかなきゃ子供たちが可哀そうだ。( 漫才師 玉袋筋太郎 )

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清掃員の仕事を始めた後、事務所の先輩芸人でダチョウ倶楽部のリーダー

肥後克広さんに言われた。「 やりたいことは何でもやれ。ダメだったらヘラヘラして

帰ってこい 」。お笑いについての助言だったが、人生訓のように聞こえた。

『 ダメだったよ~ 』と笑える人間かどうかは大きい。知らず知らず影響され、

そんな生き方をしている。( 芸人 ・ ごみ清掃員 滝沢秀一 )






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 切り抜き ④




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( 山田洋次監督が渥美清を評して )

彼は学校の勉強はできない。でも時々おかしいことをいう。

それがどのくらい人間と人間を結び付けたか。それが人間としての力なんだ。

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( ウクレレ漫談家 牧伸二が師匠の牧野周一を語って )

僕も1等車に乗れるようになったころのこと。満員で立っていた僕の風体を見て

車掌が「 2等車へいきなさい 」と怒鳴った。悔しくて「 あの車掌ぶん殴って

やりたかった 」と先生に話すと、 「 オレは芸術家だという気構えでいたら

そんな言葉は出ないはずだ。そんなことを思ってもいかん 」 と涙ながらに

怒られたことは今も忘れない。

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( 新聞記事より )

和泉署の調べでは、窃盗容疑で逮捕されたのは市内の無職少年。

自営業者は少年を見つけた際、「 堪忍して。逃がしてほしい 」と

懇願されたが、「 ここで逃げたらもっと悪いことをする。まだ若いんやから

捕まっておいたほうがええ 」と説得。おとなしくなったという。

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性行動は本能ではない。出会った人や経験から学ぶ面で文化だ。

満員電車で人に痴漢行為を思いとどまらせるのは家庭や職場の

人間関係を考えたり、犯罪行為だとの自覚があるから。本能が

弱いからやらないのではない。

        ( 性教育者 山本直英 )

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ある時、弁護士会の会議の後の飲み会で私がにこにこ笑いながら

お酌をして回っていたんです。するとある先輩弁護士のところにつぎに

いった時、「 あんたお酌して回るのよしなさい。あんたは酌婦ではない 」

座がしらけてみんなしーんとしました。でも、彼はわたしをしかるような顔をして

周りの人に「 この人をきちんと弁護士として扱ってやれよ 」と宣言してくれた

わけです。弁護士として一本立ちできた忘れられない思い出ですね。

                  ( 弁護士 渥美雅子 )

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  ハジメ  よかった

  がっこうに  かよった

  かよった  かよった

  ワタシの  一ねんせいは

  かっこう  よかった



  オワリ  よかった

  かわやに  かよった

  かよった  かよった

  ワタシの  九十六  ねんせいは

  かわい・・・らしかった


  ( まどみちお 「 ワタシの  一しょう 」 )



                             
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 切り抜き ③




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「 だれでも生まれた時は180度全開の可能性を持っているが、

  何もせんでいれば、人生の節目ごとにどんどん閉じてきて、

  しまいにはただの棒になるぞ 」( 日野自動車販売社長竹田晃 )

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記憶は過去のものではない。それは、すでに過ぎ去ったものの

ことではなく、むしろ過ぎ去らなかったもののことだ。

             ( 「 記憶のつくり方 」長田弘 )

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もし君が時に落胆することがあったらこの男のことを考えてごらん。

小学校を中退した。田舎の雑貨屋を営んだ。破産した借金を返すのに

15年かかった。妻をめとった。不幸な結婚だった。上院下院に立候補し

2回落選、歴史に残る演説をぶったが聴衆は無関心。新聞には毎日叩かれ

国の半分からは嫌われた。こんな有様にもかかわらず、想像してほしい。

どんなに多くの人々がこの不器用なぶさいくなむっつり者に啓発されたかを。

その男は自分の名前をいとも簡単にサインしていた。A ・ リンカーンと。

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小学校3年まではよくできた。ところが4年になって少数の授業が始まり

急に分からなくなってしまった。掛け算や割り算は正確にできているものの

少数点が違うために全部 X になってしまうのである。


 「 たかが点の違いくらいまけてくれてもいいじゃないか 」


先生にくってかかったところ、


 「 小数点が違うということは大変なことなんだ。お医者さんが

   1gの薬を飲ませるのに10gも飲ませたら死んでしまう。

   逆に0.1gしか飲ませなかったら治る病気も治らないじゃないか 」


これは小数点の意味大切さが分かり目を輝かせた小学校時代を

述懐した医者の話。

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ダルマさんと聞くと学生時代のテストを思い出しますね。

白紙同然の解答用紙の裏に、大きくダルマさんを書きました。


 「 あー、手も足も出ない 」


   ( 故笑福亭仁勇( にゆう )さんのエッセイより )



                  この項続く



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